生徒からのよくある質問

1.嫌いな科目はやらなくていいですか?

 嫌いな科目を嫌々やっても時間のムダ、ものになりません。それでも入試は総合得点ですから、弱点科目があると不利になるというなら、好きな科目で補いましょう。
 人は十人十色、好きな色もあれば、嫌いな食べ物もあるでしょう。全部が好きという人はまれ、それが個性というものです。
 ただ、嫌いな理由が「できないから」というのは違うと思います。高校課程までの科目で、やってできない科目などありません。食わず嫌いにならずに、本気でやってみましょう。必ずできるようにはなります。(好きになるかどうかは分かりませんが。)
 「本気でやって、結果ができない」ではみじめになるから最初からやらないと試合放棄するのが最悪です。トコトンやってそれでもダメだったら、その経験から得るものはいっぱいあります。

2.プレッシャーにつぶされない方法を教えて下さい。

 プレッシャーを感じる原因は何でしょう。「悪い結果が出たらどうしよう」という不安や心配でしょうか。
 「悪い」とはどういうことでしょう。「願った通りに行かなかった。応援してくれたみんなに申し訳ない」という後悔でしょうか。「不合格」や「予選敗退」という「取り返しのつかない」結果でしょうか。
 悪い結果を心配するあまり、混乱したりやる気を失ったりしては本末転倒です。いっそのこと、最悪の事態を想定して対策を講じるべきです。「ドクターX」のように、想定外の事態がないようにありとあらゆる事態に二の矢、三の矢を準備することです。その上で、腹をくくることです。
 人生で取り返しのつかない一発勝負となれば、緊張がピークに達するのは当たり前です。この瞬間に底力を発揮して集中力に変える人と、押しつぶされてメタメタになる人に分かれます。みんなの目が集まっています。みんな緊張しています。蹴落とすべき敵ではなく、同じ闘いをしている同志です。
 勝利か敗北か、どちらかの結果が出ます。しかし、そこで終わりではありません。過去は変えることはできません。でも、過去の意味を変えることはできるのです。負けを次に活かす人もいれば、勝ちの上にあぐらをかいて人生をダメにする人もいます。
 負けたと思うまで、人間は負けない。
3.集中力がなく、だらけた生活をやめるにはどうしたらいいですか?
 若者の特権は、死ぬまでに時間がたくさん残っていることです。同時に、若者の欠点は時間がタダだと思っていることです。
 ビジネスの世界で最も大切なのは時間です。時間を最重要視している人は成功します。14歳で日本一になる若者がいます。成人しても当てもなくだらだら過ごしている人もいます。その差は時間の使い方で決まります。
 だらけている時間とリラックスしている時間は違います。仕事ができる人ほどレジャーを楽しんでいます。次の時間に何をするか、目的がはっきりしていて、時間に意味を持たせているのです。
 もし、嫌なことをしなければならないなら、集中力を高めて所要時間を半分に短縮すればよいと思います。
そうして、残った時間を好きなことに使うのです。
 人生は長いです。が、序盤の20歳までの間に、どんな体験をしたか、どんな人生設計をしたかでほぼ決まります。

4.自分の夢を親が納得しない、友だちにもバカにされた時、どうしますか?

 夢を持つことは能力開発の上で最も影響力があります。その夢を周りの人に話すことも素晴らしいことだと思います。なぜなら、自分の夢は自分一人で実現できるものではないからです。
 その最初の一歩が、夢の内容を具体化すること、その次が達成する方法を考えることです。みなさんはまだ経験が乏しいので、できるできないは度外視して夢を描くことが多いと思います。それは素晴らしい若者の特権です。誰も、どんな突飛な夢であっても「絶対にできない」とは言いきれないのですから。
 一方で、夢の内容や達成する方法については、いろんな人にきいて情報を集める必要があります。たとえ冷や水を浴びせられたとしても、それも貴重な経験や情報の一つです。本気で自分の夢を実現しようと思ったら、多くの人たちの協力が不可欠です。賛同を得、協力を取り付けられるよう、説得力をもった話に練り上げなければならないのです。

5.夢とは何ですか。幻想ですか?単なる憧れですか?それとも現実から逃げるための麻薬ですか?

 幼い頃の夢は憧れです。プロのサッカー選手やノーベル賞博士から、新幹線の運転手やケーキ屋さんまで、年とともにコロコロ変わって行きます。
 いろいろなことを知り、いろいろな経験をすると、だんだん夢も現実路線になって、それまで抱いた憧れと同様に、これから描く夢も所詮は幻想に終わってしまうのかなあと諦めが頭を横切ります。
 それでも周りを見ると、まだ夢を諦めきれないで未練たらたらの夢見る夢子ちゃんがいます。そういう人を見ると、「子どもだなあ。早く現実を直視しろよ。そんなことをしてると、人生の階段を踏み外すぞ」と言いたい気持ちになります。
 夢とは人生の目標です。夢のない人生は空しい。夢は変わって行くもの、成長して行くものです。だから、今は憧れで十分なのです。なぜなら、今日が楽しくて、充実した時間を過ごせるからです。

6.部活に没頭すると疲れ果てて、勉強との両立ができないのですが…。

 部活は何でもいいのでやった方がいいと思います。ただ、部活の方が面白くて、勉強は二の次、三の次で、部活にのめり込んで毎日ヘトヘトという人が特に進学校にいます。
 たいていの学校は文武両道を校訓にしています。体が思い通りに動く若いうちに「武」をとことんやることにも一理あります。部活を入試の半年前までやっていて、やり終えた後で蓄えた体力と精神力で一気に追いつくという人もいますが、現実的には入学した時点で、「文」と「武」の両方の目的が達成できるように、三年間を見通した計画を立てるべきだと思います。
 文武両道を達成できる人はほとんどいません。人の2倍くらい時間を大切にする気持ちが必要になります。

7.人の役に立つような仕事をしたいのですが、どうしたらできますか?

 人の役に立つような仕事をしたいという気持ちは尊いと思います。自分のことだけでなく、誰もがみんな人の幸せを思いやり、人が喜ぶ顔を見て自分も喜ぶという考え方になったら、どんなに素晴らしい世の中になるでしょう。
 一方で、仕事というのは、どんな職業でも人の役に立っているのです。だからお金がもらえるのです。だから、どんな職業に就いても必ず人の役に立てるのだと自信と誇りを持って下さい。
 その上で、人が嫌がる仕事やもっとたくさんの人の役に立つ仕事に就きたいということなら、能力を身につけ、人一倍の苦労をしょいこむ覚悟しなければなりません。嫌いだからという言い訳は許されませんし、時には他人がやらかしたミスの責任までとらされる理不尽な場面にも遭遇するかもしれません。
 艱難は汝を玉にす。

8.受験に失敗したことがトラウマになっていて、本番でまた失敗しそうなのですが。

 失敗すればするほど弱くなっていく人と、失敗すればするほど強くなっていく人がいます。何が違うのでしょうか。
 まず、精神面では前者は自信喪失とやる気喪失、後者は悔しくて負けた直後からリベンジに取り組む。思考面では、前者は頭がまっ白で思考停止状態、後者は負けてはじめて気づいたことを冷静に分析し対策を講じる。
 どんな人間も一生勝ち続けることはできません。運よく勝ち続けてきた人の方が物騒です。負けた時の対処法を知らないからです。エリートと憧れられていた人が一回の失敗でふぬけになったり、果ては自殺したりということがよくあります。
 失敗したトラウマから脱する方法は1つしかありません。逃げないこと、現実を直視することです。問題点が明白になったことを喜び、再チャレンジしましょう、何度でも。それを克服した時、いいことがあります。失敗しなかった人より強くなれることです。骨折した後、骨は前より太くなっているのです。

9.ゴーイング・マイ・ウェイでひとりでどんどんやって行く人と、人間関係を築きながらチームプレイでやって行く人はどちらが成功しますか?

 アメリカ人は典型的な個人主義で、協働作業はできません。でも、誰も考えつかなかった画期的なアイデアを産み出します。日本人はその種をもらって売り物に仕上げるのが得意です。
 日本人は自己主張を控えます。自分の意見を述べません。意見が対立して、関係が気まずくなるのを恐れます。1400年前の聖徳太子の「和を以て尊しとなす」を守り続けています。
 国民性の違いを知り、また自分の個性を見極め、TPOをわきまえたうえで、個人プレイを貫き通すか、チームプレイを優先すべきか判断する必要があります。
 目指すモデルがある間はチームプレイが有効でしたが、最先端に達して先例がない時代に生きて行く皆さんは、これまでのやり方を変えなければなりません。それを知るためには、早いうちに一度、海外で生活してみることです。

10.嫌なことを我慢してくじけそうになる弱い自分と闘って克服した人と、好きなことを楽しく粘り強くやり抜いた人では、どちらが偉いのですか?

 「偉い」ということばは、自分にはできないと思うことをやり遂げた人に対する敬意を表すものです。それは成果や才能に対するだけではありません。障害をもった人が健常者と対等に付き合ったり、義足を付けてスポーツをするのを見て、同情するのではなく健常者の記録以上に感動を与えてくれるのは、その精神的な強さ、内面性の美しさに魅かれるからです。
 生まれ持った才能、環境は人によってさまざまです。著しい差があります。高いレベルからスタートできる人、どん底から這い上がるしかない人。7合目までヘリで荷物を運んでもらって最高峰を踏破した人と、麓から一人で3000メートルの山の頂に到達した人とどちらが「偉い」と思いますか。
 人類初の発明をした人も偉いですが、クロコとして社会を支えている人も十分偉いと思います。

11.人類は進歩しているのですか。ぼくたちの時代はもっと良くなって行くのですか?

 何をもって「進歩」というかによって答えは変わります。「良い時代」という意味が「幸福が増進していく時代」ということなら、人類は進歩していません。
 確かに科学技術の発達によって、人類は日食にしろ雷にしろ無用の恐怖心から解放され、乳幼児の死亡率は下がり、おいしい物を食べられ、楽しいゲームに興じることができるようになりました。
 一方で、仕事でストレスがたまり、離婚や自殺は増加、日本に生まれたみなさんは1000兆円もの借金の返済を背負わされています。縄文時代の方がよっぽど良かったとエリート職を捨てて山麓に家族だけで暮らす人もいます。
 今から7万年ほど前、類人猿が次々に絶滅して行く中で、ホモ・サピエンスだけが生き残り、21世紀末には100億を超えるまでに世界は広がりました。その時、今より良い時代になっているか。
 確実に言えることは、その時、今の世界を支配している世代は一人もいないということです。だから、次の(次の次の)世代が何を考え、どういう世界に変えたいと希望するかによって決まるということです。
 7万年の間に恨みがたまり、問題は複雑化しました。こうした負の遺産を潔く引き受けて、正の遺産である情報のインフラを活用して合意形成を図る必要があります。
 「今より良い時代」は与えられるものではありません。原点に立ち返って、個人的な目的追求が社会全体の発展に寄与する価値体系と社会制度を構築する必要があります。

12.私は何のために生きているのですか……。

 「人生の目的はない」とか「それを見つけるために人生がある」という人は愚か者です。私たちの命は自分で創ったものではありません。創ってもらったものです。命をくれたのは親です。その命の目的は、自分で決めたり、探したりする前に、与えてくれた人にきくべきものでしょう。
 親は「幸せになってほしい」「好きなことをいっぱいやって人生を謳歌してほしい」「人の役に立てるような人になってほしい」と願いを込めて名前をつけてくれました。
 その願いに応えることが人生の目的です。どうやって応えるか。
 一つは、2003年にリリースされた曲が教える通り、「世界に一つだけの花」を咲かせること。
 もう一つは、未曽有の大惨事となった東日本大震災の地獄の底から聞こえてきた曲「花は咲く」が教えてくれたことです。

 

 個性を開花させることと、次代につながる何か良い種を遺すことです。永遠性のないものに価値はないのですから。
 私の唯一無二の個性とはどんな内容なのか。どんな意味があってこの時代の、この家に、この世界に生まれて来たのか。それを正面に見据えて、楽しく真摯に生きて行けばだんだんはっきりして来ます。そういう能力「セレンディピティ」が人間には与えられているのです。