21世紀に生まれた世代に求められる能力は、明治以来求められてきた従来の能力とは違います。例えば、小学校就学前に「もう100まで数えられる」とか「九九の大半はおぼえた」よりも、次のような問題を真剣に考える力です。
1.数には2つの意味があります。それは何と何ですか。
小学1年の教科書には、①大きさ②順番と書いてあります。
数学の定義としては、「数とは、①量と②順番を表す概念」となります。
また、基数と順序数とも言います。図形的には、①位置と②距離でもあります。
数は、まず生活上の経験から順番を数えるものとして作られました。
これが、1、2、3…という自然数です。
次に、1、2、3…と数えていって最後の数が個数になることから、大きさ、量、基数としての意味を持つようになりました。
さらに、量を細かく知るために小数が考え出されたのです。
2.みかん1個とリンゴ2個をたすといくつですか。
みかん56個からリンゴ19個をひくといくつですか。
【注意】みかんからリンゴがひけるのですか。みかんとリンゴがたせるのですか。みかんとリンゴは違いますよ。それとも、同じ果物だからたせるのでしょうか。
みかんとリンゴは違います。違う物はたすこともひくこともできません。
かけ算2×3の2と3や、わり算6÷2の6と2は同じ物である必要はありませんが、たし算やひき算は同じ物でなければなりません。
では、みかん1個とリンゴ2個をたすことはできないのでしょうか。
みかんとリンゴはたすことはできません。でも、みかん1個とリンゴ2個はたすことができるのです。
それは、みかんとリンゴの違いはいっさい無視して、個数だけを問題にしているからです。
だから、みかん1個とリンゴ2個の個数の合計は、3個。みかん56個とリンゴ19個の個数の差は、37個です。
逆に、1つ1つの物の違いの方を問題にする場合は、たとえ同じみかんでも同じものは1つもないことになります。
それを同じ「みかん」という名前で呼ぶことがすでに違いを無視している見方なのです。
それを「ことば」といいます。
「数」という考え方(概念)は、形も色も性質までも無視して、ただ単純に「周りと区別してある領域を占めている」だけで「1つ」とする究極の抽象概念です。
だから、腐ったみかんと極上のリンゴをたすことも、巨大な星とバイキン1個をたすことだってできるのです。